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Interview vol.16
石川歩×竹下雄真

シーズンをフルに闘い抜くためのトレーニング・ヨガ。
その中から常に自分のボールを投げられる安定感あるピッチャーを目指したい。

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石川歩(いしかわ・あゆむ)1988年4月11日生まれ。富山県出身。富山県立滑川高〜中部大で活躍。大学時代は1年春から公式戦に出場。4年次にはエースとしてチームを牽引し、東京ガスへ。社会人3年目でチームをベスト8に導き、東アジア競技大会日本代表にも選出。2013年のドラフト会議で読売ジャイアンツと千葉ロッテマリーンズの2球団から1位指名を受け、抽選の末、ロッテ入団。1年目で10勝を挙げ、新人王に輝いた

竹下雄真(以下:竹下):
まずは新人王おめでとうございます。あらためて昨シーズンを振り返り、いかがでしたか。

石川歩(以下:石川):
ありがとうございます。自分としては、プロのペースに慣れることに苦心した1年でした。

竹下 :
とはいえ、これといった故障もなくローテーションを守り、入団1年目を乗り切れたことは大きかったのではないですか。

石川 :
そうですね、大きかったです。1年の流れがはっきりとわかったので、来年はもう少しリラックスして臨めると思います。幸い、今時点での疲労感はそれほどでもありませんし。おかげ様でシーズン中から上手く調整できていた、ということかと思っています。

竹下 :
昨シーズンの勝利のうち何回か、相手が手も足も出ない試合がありました。いい時は、本当にスイスイと抑えてしまう。あれが毎試合になったら、まあ、すごいですよね。「ゾーンに入る」ような状態で抑えて、まるで石川投手のショーのような試合を作れる。そういうピッチャーは、決して何人もいるわけじゃない。

石川 :
ありがとうございます。

竹下 :
何度か、相手が諦めているように見えた試合がありました。特に、最後に先発した試合(2014年10月1日:QVCマリンフィールド。対 埼玉西武ライオンズ 24回戦。9回4安打10奪三振無四球で完封)は、圧巻の素晴らしいピッチングでした。

石川 :
調子の波がある中、最後の試合だけはどうにか抑えることができましたね。

竹下 :
マリーンズは成瀬善久投手が移籍したので、今シーズンの石川投手はエースとしての活躍を期待されることになります。当然、研究もされるでしょう。来シーズンの目標はどんなところに置いていますか。

石川 :
エース云々はなるべく意識したくない。そして、考え過ぎないようにしたいですね。常に自分のボールを投げられる安定感を身につけねばと思います。自分のボールを投げられる率が高まれば、おのずと結果はついてくると思っています。

竹下 :
野球って統計的なスポーツじゃないですか。納得できるボールを投げられる率をいかに高めるか、という勝負だと思うんですよ。自分が一番納得する球が投げられれば勝てるピッチャーのはず。その精度を高めることが大事ですね。そのためにも、シーズンオフの目標はどんな所に置いていましたか。

石川 :
体重をまず増やすこと。それと、体幹、肩甲骨まわりの動きをよくしていくことですね。

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竹下 :
僕が最初に石川投手を見たのは、社会人(東京ガス)時代。身長186cmに対し体重が73〜74kgと、全体的に細い。体重を増やしたいと石川投手自身も言っていたので、昨シーズンはそこに着手しました。とはいえ、そもそも、その体重でドラフト1位指名されるわけだから、体を作り変えるようなことをする必要はない。今の状態からより進化するためにどうするか。そこを考えた感じです。一般的には急激な体重のアップ具合だとは思いますが、まずはプロ1年目の昨シーズンを77〜78kgで乗り切れるような計画でいきました。ほぼその数字でいけましたよね。

石川 :
いけました。それで、できればこのオフで、体重を84〜85kgぐらいにしたいんですよ。

竹下 :
僕の見立てでは、このシーズンオフは多くて83〜84kgかなと。キャンプからシーズンインした後は自然と少し落ちるので、それで81〜83kg。その辺が今の段階では適切じゃないかと思います。急に上げるべきではないと思っています。徐々に適切なところまで上げていき、2年後ぐらいに完成。そんなイメージかな、と。ピッチャーとしての自分の将来像をどうイメージしていますか。

石川 :
やはり、空振りが取れるピッチャーになりたいです。そのためには、今やっていることを継続しながら、体を大きくしたいですね。

竹下 :
計画的にやっていくことです。一番ダメなのは、知らない間に体重が増えた、減った、です。それはプロのやることじゃない。中高生ならともかく、プロでシーズン中に体重が3kgも4kgも変わるのは、プロフェッショナルじゃないと思う。体重が変わって結果を出している人もいるとは思います。でも、絶対に長続きしない。パフォーマンスが変わりますからね。競技によっては、例えばボクシングなら階級がいくつも変わってしまいかねない増減幅なわけです。僕はバッファーとして、多くてプラスマイナス2kgだと思っています。石川投手は、体重のキープは得意ですか。

石川 :
僕はなかなか増えないんです。ほっておくと減ってしまう。気をつけて普段からしっかり食べないとダメなんです。

竹下 :
好きなだけ飲んで食うのが野球選手、みたいな昔気質は、今後もうなくなりますよ。スポーツサイエンスやニュートリションサイエンスがどんどん進化しています。体調管理をしっかりしている選手と素材だけで勝負している選手の間には、最初はそれほど変わらなくても、最終的にすごく大きな差が出てくる。ケガは疲労の蓄積で起こります。それによってかばったせいでフォームが崩れたり痛くなったりする。ですから、なるべく入念なケアを行うことです。

石川 :
まさに、そうですね。

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竹下 :
ところで、石川投手がウチでヨガをやるようになったのは、去年の夏前ぐらいでしたか。

石川 :
そうですね。ヨガにはもともと興味があったんです。でも、なかなかやるタイミングやきっかけがなかった。そこで夏前に調子が落ち始めたころ、登板翌日か翌々日のウエイトトレーニングの代わりに取り入れてみたんです。今までは登板翌日は、長めの距離を走ってウエイトトレーニングをして、という感じだったのですが、そこを変えてみたら上手くいきました。1年目ということもあり、コンディションに合わせてトレーニングを加減できていなかったんですね。体が張っているので負荷を抑えないといけないのに「もっとやらないとダメだ」とあせり、疲れているのにガンガンやってしまった。その結果、よけいに疲れが残ったこともあったんですよ。それもありヨガを取り入れてみたら、疲労が抜けてすごくよかった。

竹下 :
ホットヨガは疲労物質が汗とともにたくさん出ますからね。先発ピッチャーですから、登板後、次の試合までに疲れを残さないよう、いろいろとやることがある。

石川 :
僕の場合、腰の張りがあると調子が悪くなりがちですが、ヨガと針治療で上手くケアできたと思います。

竹下 :
石川投手は、体幹と下半身の力が抜けたような状態になっている時は、調子が悪い。それをできる限り減らすことが大事です。疲労によって、骨盤のアライメントが悪くなりがちです。本来スムーズに動くものが動きにくくなるんですね。ヨガはアライメントを整えることにすごく有効です。体全体の柔軟性が高まりますし、骨盤や胸骨のアライメントがよくなるのも、大きなメリットです。

石川 :
ヨガを始めて、精神面も含めて明らかに調子が上がりました。昨年ヨガを取り入れて、登板前日をいいイメージで迎えられる日が増えましたね。僕は登板前日の練習で投げた感じで、次の日の調子がだいたいわかるんです。

竹下 :
できるだけ多く、登板前日にいいイメージをつかんでもらいたい。そういう意味でヨガの目的は疲労物質を取ること以外に、呼吸をしっかりして自分に向き合う時間を作ることもあります。

石川 :
すごくリフレッシュできましたね。休むべき時にしっかりとリラックスできて、集中力が高まった気がします。

竹下 :
先発は失敗するとダメージが大きいというか、後を引く。一度打たれたら、それを挽回するには1週間かかるわけです。精神的なダメージが大きくなるので、次の登板までのメンタルケアは重要。試合の結果の良し悪しとは別に、自分と向き合う時間を作るのはいいことです。僕らが捜したいのもそういうもの。石川投手が試合前日の練習で「明日も大丈夫だ」と確信を持ってくれるには、何をすればいいのか。それをしっかり考えていきます。例えば今日は下半身や体幹を上手く使えていなかったら、それはなぜなのか。そして、そうならなくするにはどんなアプローチがいいのか。それを野球のテクニックに限らず、いろいろな面からちゃんと見る。それを今年もやっていきます。

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石川 :
昨シーズンで、プロとはどういうものなのかをつかむことができました。だから、今年は最初からいい調整をしていけるので、もっと進化できるはずです。

竹下 :
ぜひ今シーズンも相手を飲み込んで、制圧してしまうようなピッチングをして下さい。僕らはその確率と精度をなるべく高めるお手伝いしかできないけれど、精いっぱいサポートします。

石川 :
ありがとうございます。頑張ります。

Location: Deportare ClubMarch 2015
Editor: Naruhiko Maeda