体は嘘をつかない。
音は答えがない。

Deportare Club 代表
竹下雄真

ジャズ・シンガー
綾戸智恵

デポルターレクラブには、トップアスリート、経営者、文化人、芸能人など幅広い業界の一流の方が多く通っていただいています。そうした一流の会員様がトップランナーとして走り続けるためには、ライフスタイルや日常の習慣にその理由が隠されています。そこで、デポルターレクラブでは、代表・竹下雄真と会員様との対談企画をスタート。日ごろ実践している健康法やウェルネスに対する考え方、そして、忙しい日々の中、どのようにスケジュールを管理しているかを聞き、一流の会員様が一流である所以に迫ります。連載第7回目は、ジャズ・シンガーの綾戸智恵さんをゲストにお招きしました。

竹下 綾戸さんとは、出会ってから長いですよね。僕が20代の頃からでした。

綾戸 あの頃の私はほんまに忙しくて、年間270本くらいコンサートをやっていた時期やった。

竹下 懐かしいですね(笑)。たしかコピーライターの糸井重里さんのつながりで。

綾戸 そうそう。糸井さんのビルにトレーニングジムがあって、「綾戸さん行けへんか?」って言われて、「行ってみるわー」って。

竹下 当時僕も糸井さんを担当していたので、その流れで綾戸さんも担当させてもらうことになったんですよね。

綾戸 そうだよね。体ってほんまに嘘つけへんねん。まがいもんじゃない。やったらやっただけ、やらんかったらやらんかっただけ、結果が正直に出る。音楽って、目に見えへんし、感じるものやから、決まった“ハウツー”がないやん?でも筋トレは違う。体は違う。「こうやったら、こうなる」って答えがちゃんと返ってくる。

竹下 やった分だけ成果が返ってくるものって、世の中そんなに多くないですから。

綾戸 しかも早いねん。早いと一週間で出る。私なんか、家でもこっそりやってたし、電車の中で足上げてたりして(笑)。

竹下 綾戸さんは“コソ練”がすごいですよね。だから進化のスピードが本当に早かった。コンテストに出られるくらいの腕でしたから。

綾戸 でもね……あれから何十年も経って、今回圧迫骨折したでしょ。しかもリハビリ中に。5日も入院したのは初めてやったけど、何より“寝たまま”が嫌で。内臓と違って骨折は「折れてる」って分かるから、気持ちはどこかクリアやったんよね。でも病室で天井のシミを見て、ハッとした。介護してたおばあちゃん(母)が、そうやって認知症に入っていくのも見てきたから。「このままやと、わからんようになるで」って。それで看護師さんの名前を覚えて、毎日名前で呼んでたら人気者になって(笑)。退院してからも、「ここからが私の出番や」って思った。息子がデポルターレクラブに通ってたから、私も“後輩”になったつもりで、また動き出したんよ。

竹下 これまでに、お母様の介護もあってトレーニングどころじゃない時期もあったと思います。そこからコロナもあって、股関節の手術もあって、今回の圧迫骨折。僕としては綾戸さんのフィジカルもメンタルも、もう一回戻したいと思ったんです。

綾戸 人間って、きっかけがどうやって来るか分からへん。いいことも悪いことも。私も「なんで今ここで骨折?」って思ったけど、悔やむより「このくらいで済んだ」と考えた。

そのとき、あんたが言ったんよ。「綾戸さんは、前にもトレーニングをやっているから戻るのは早いですよ」って。あれが不思議で、今でも覚えてる。

竹下 いわゆる“マッスルメモリー”ですね。筋肉が覚えてるんです。

綾戸 始めて2週間後に筋肉量が増えているって言われたとき、「あ、こういうことか」って思った。家でも洗濯物上げたり、ちょっとずつ動いていたしね。動き出したら、メンタルも変わった。

竹下 綾戸さんはまだまだいけるって思っていました。年齢で線を引くより、もっと先まで行ける。

綾戸 今の時代、「100歳まで生きられる」という言葉は一般的には良く考えられているけど、私にとっては自分を怠けさせる言葉やねん。70手前の私に限らず、10歳の子どもからもうすぐ100歳の老人まで、 “もう大して生きられないかもしれない”って気持ちで動くほうがいいと思った。それで今回、またレコーディングも始めて、セルフプロデュースにも挑戦した。
40代からの30年を積んできたのに、歌うだけで終わるのはもったいないって思ったんよ。自分のことなら責任も引き受けられる。――面白かったよ。

竹下 では今回が、初の試みだったんですね。

綾戸 そうそう。前に一回(セルフプロデュース)やったときは、好きな曲を入れるだけで精一杯で、曲間の流れまで仕切られへんかった。45歳や55歳のええ歳でも、経験不足は経験不足。年を取ってダメになることもあるけど、年を取らな分からんこともある。その両方をどう使うかが、ここからやと思った。

だから今回は“セルフプロデュース”っていうなら、いっぺんみんなを調理してみようと思ってん。

竹下 そこからタイトル『UMAMI』が?

綾戸 そう。子どもの好き嫌いもそうやけど、焼いたら食べへんのに、炊いたら食べる野菜もある。でもそれって、野菜のせいやない。”うま味”を出せるか出せないかは作る側の責任やねん。「若いからできるやろ」「歳いってるからできるやろ」って上から言うんじゃなくて、私も中に混ざって“ごった煮”されようと思った。楽しかったけど、楽しいって、いつも、すぐ横にしんどさもあるな。

竹下 どんなところが、しんどかったですか?

綾戸 心にもないことを言わなあかんかったこと。あと、ほんまは言いたい。でも言わない――っていうのを初めてやった。私は黙っていても腹の中でしゃべっていることが、口から出てしまうタイプやねん。言わなあかんことは言うし、言わんでもええことも出る。だから今回は、“止める”っていう大人の仕事をした(笑)。

竹下 プロデュースする側になったからこそ、見えたんでしょうかね。

綾戸 そうやね。今までは作品への愛情はあっても、作り終わった後のことまでは考えてなかった。でも今回は、メンバー一人一人が家族みたいに愛おしくなった。

竹下 映像を見ても、プロフェッショナルな人たちの“うま味”を引き出している感じがありました。

綾戸 帰り際に「楽しかったです」「また呼んでください」って言われて、「あ、これは嘘ちゃうな」って思った。それが、いちばん嬉しかったことかもしれない。ビデオの撮影でも“映像用の格好”はせんかった。100%音楽をつくることに必死な“おばはん”でええわ、って。こういう“種明かし”って、若いときはできひん。年を重ねた特権やと思う。だから私は、70になるのが嬉しい。“やめられる年齢”になっても、まだいけるって思えるから。『Here’s To Life』も、若いピアノの力を借りて歌えるかなと思って挑戦した。そしたら、「今年やってよかった」って思ったんよ。来年もし声が出なかったら困るやん。ええタイミングやった。

竹下 僕が見てきた中で多いのは、年を重ねたことを理由に限界を“手前”に置いてしまうことです。本当はもっといけるのに。

綾戸 私、まだ“降りれない”で(笑)。いまは杖を使って登ってる感じ。車椅子じゃないけど、杖は必要。今回で言うたら、西嶋くん(※1)が私の杖や。「譜面書いて」って頼める年齢になった。歳いったら、歳の向こう側を超えていかなあかん。若い人には、もっと“できる力”を出してほしいね。

竹下 今後は、フィジカル的にどうなっていきたいですか? 中長期で「こうしたい」みたいな目標は。

綾戸 まずは自分が知っている自分まで戻したいねん。原因がはっきりしているから。骨折があって、そこに老化も重なっている。その二つをうまく折り合い付けながら、「ここまではできるはず」ってところまで戻す。私、十段跳びしようとは思ってないよ。昔からできひんし(笑)。でも、骨折する前の自分に近いところまでは戻したい。戻していくうちに、超えるかもしれへんし、このままかもしれへん。――それでOK。ただ、これ以下にはなりたくない。だから、ちゃんと保持していきたい。そのために、トレーナーが大事。接骨の先生も含めて、専門家の助けを借りながら。骨密度も測って、いろんなサポートを受けて、ちゃんと整えていきたい。

竹下 そのために、僕らがいますからね。

Chie Ayado’s
Basic Time Schedule (Week Days)

綾戸 歳を重ねるって、レベルアップや(笑)。70、71、72って進むこと自体が、もう目標になってくる。ここからは若さでぶっ飛ばして何とかなる年齢やなくて、技量がいる年齢になってきた。昔はすっぴんでも出れたけど、今はメイクに1時間かけてやっとやし(笑)。つまり、一人ではあかん。助けがいる。こっからは、己との闘いやな。

竹下 いいですね。僕らも微力ながら、支えていきます。

綾戸 ありがとうございます。末永く、よろしくお願いします!まだ登るで、私。

※1.西嶋徹 今回リリースされるアルバム『UMAMI』のサウンドプロデュース・編曲・Wベースを担当

綾戸智恵(あやど・ちえ)

3才でクラシックピアノをはじめ、17才で単身渡米。2001年、第51回芸術選奨文部科学大臣新人賞(大衆芸能部門)受賞。2003年、紅白歌合戦で熱唱した「テネシー・ワルツ」が大きな話題となり、これまでに売り上げたCDの枚数は100万枚を超えている。絶妙なトークと個性的なステージで多くのファンを魅了。2017年デビュー20周年と還暦をむかえ、コロナ禍にはアルバム「Hana Uta(はなうた)」リリース、2026年2月2日にはセルフプロデュースアルバム「UMAMI」をリリース。YouTubeでの自宅弾き語り動画「ジャズバーまいど」やPodcast「綾戸智恵のばば放談」でのおしゃべりも大好評。着実な歩みを続けている。
オフィシャルサイト https://www.chie-ayado.com


ヘアメイク:赤間直幸(Koa Hole)

UMAMI レコーディングミュージシャン:
天野清継(G) 林正樹(P) 西嶋徹(WB) 大嶋康司(Tb) 宮川純(Org) 高橋直希(D) 吉田篤貴(Vl)ストリングスの皆さん


撮影場所:カフェレストラン Shu https://cafe-shu.com

綾⼾智恵セルフ・プロデュース・アルバム「UMAMI」―――

綾⼾智恵、68 歳。40歳でデビューし古希が覗けてきた今、セルフ・プロデュースする今作「UMAMI」。
「私の味ってどれ︖これかなぁ︕︖」というところから始まったアルバム制作。満を持して登場する楽曲達は、マービン・ゲイやティナ・ターナーの「I Heard It Through The Grapevine」をバンドサウンドで、バカラックの「I Say A Little Prayer」をオルガンで、またしても選ばれし「Route 66」は68歳バージョンとして更にJazzy な仕上がり。街で⽿にしてもう⼀度歌いたくなった「Hallelujah」で深い祈りを。ミュージカル曲として名⾼い「Smoke Gets In Your Eyes」では壮⼤なストリングスも。ジャニス・イアンの「Jesse」ではカルテットでしっとり。そして何といっても今作では、綾⼾智恵CD史上初の⽇本語詞を歌唱「My Blue Heaven(私の⻘空)」が郷愁と和みを誘います。ジャズのみならず、ブルース、ソウル、ポップスと、沁み渡る歌と演奏が⼼地よく次から次へとやってきます。
旧知のベーシスト⻄嶋徹にサウンド⾯を託し、間を奏でるピアノ林正樹、燻銀なギター天野清継、若き鍵盤野郎オルガンに宮川純、トロンボーンにヤッシーこと⼤嶋康司from BBBB といった綾⼾ファンミリーとも⾔えるプレイヤーに加え、新進気鋭のドラム⾼橋直希での⼀発録りは、どれもグルービーで初々しくジワります。
⼀⽅、三つ折り紙ジャケットのインナーには、綾⼾の筆圧強めセルフライナーノーツがたっぷり。そしてなんと︕「ガンダム」の⽣みの親のひとりとして知られる安彦良和⽒の描き下ろし作品が鎮座します。綾⼾智恵の過去作品のインナーには家族の肖像が度々登場しています。⼦育てを通じて息⼦からガンダムを知り、そして綾⼾⾃⾝も安彦作品のファンとなり、今回綾⼾直々に安彦⽒に発注し実現いたしました。そんな聞きどころ⾒どころ満載の今作「UMAMI」。
歳を重ねて絞りでた綾⼾智恵の“うま味“がいっぱいです︕

【アーティスト名】 綾⼾智恵 ( Chie Ayado )
【アルバムタイトル】 UMAMI
【発売⽇】 2026年2⽉2⽇発売
【価格】 3,300円(税抜価格 3,000円)

【収録曲】
01_Hallelujah
02_Someone To Watch Over Me
03_I Heard It Through The Grapevine
04_When Sunny Gets Blue
05_Smoke Gets In Your Eyes
06_I Say A Little Prayer
07_Route 66
08_A Nightingale Sang In Berkeley Square
09_A House Is Not A Home
10_Jesse
11_My Blue Heaven(私の⻘空)
12_Here's To Life
[bonus Track]
13_Get Into My Life